ビットコインを支える維持管理ネットワーク

ビットコインに関する解説ではしばしば、ビットコインは特定の誰かによって発行や取引が管理されることのない通貨である、という説明を目にするかと思います。これは管理者がいないという意味ではなく、不特定多数の自由な参加者たち全員がビットコインの発行や取引の管理者となる、という意味です。
ビットコインは不特定多数の自由な参加者たちによる管理を技術的に実現しており、この管理手法を指して維持管理ネットワークと呼ぶことが多いようです。今回のコラムでは、ビットコインの信頼性を支えている維持管理ネットワークについて解説します。

維持管理ネットワークの構成要素

ビットコインの維持管理ネットワークは不特定多数の自由な参加者たちによって構成されています。ビットコインの新しい取引が発生した場合、その時点で維持管理ネットワークに参加していた参加者たち全員にビットコインの取引情報が伝えられます。維持管理ネットワークの参加者たちはその取引情報が正しいものであるかどうか検証し、取引台帳に記載します。ここで、最初に取引情報が正しいと証明した参加者は新たなビットコインを得ることができるというメリットが与えられています。こうして正しいとみなされた取引情報のみが取引台帳に記載され続けることで、ビットコインは取引の信頼性を確保しています。

以上のことを技術的な用語で書き下すと、ピア・トゥ・ピア (= Peer to Peer : P2P) ネットワークで結ばれたノードがプルーフ・オブ・ワーク (= Proof of Work : PoW) を実施することで信頼できるブロックチェーンを維持する、となります。

維持管理ネットワークを構成するピア・トゥ・ピア、プルーフ・オブ・ワーク、ブロックチェーンはそれぞれ技術用語であり、あまり耳慣れないか言葉かと思います。これらの用語について詳細を知らずともビットコイン取引はできますが、維持管理ネットワークの信頼性がどのように作り上げられているのか知ることで、仮に何らかのトラブルが起こった際も原因を素早く把握することに役立ちます。以降ではそれぞれの用語について解説します。

ピア・トゥ・ピア

ピア・トゥ・ピアはコンピュータ間で通信を行う仕組みのひとつです。一般にP2Pと書かれることが多いため、本記事でも以降はP2Pと記載します。P2Pはコンピュータ同士を直接結ぶネットワークであり、P2Pネットワークに参加しているコンピュータはノードと呼ばれ、全員が同じ機能を持ちます。P2PはIP電話や映像のストリーミング放送などに用いられています。ビットコインの維持管理ネットワークにおいても同様に、維持管理ネットワークへの参加者たちは全員が同じ機能を持っています。

P2Pの対極としてしばしば挙げられるのが、クライアント-サーバ方式と呼ばれる通信方法です。サーバと呼ばれるコンピュータに対し、大勢のクライアントと呼ばれるコンピュータが接続します。サーバとクライアントは別々の機能を持ちます。例えばこの記事を閲覧しているコンピュータはクライアントであり、記事を保持しているサーバに対して「WEBブラウザで表示するためのHTMLや画像をください」と要求しています。クライアントとクライアントで通信する場合、その通信は必ずサーバを経由して行われます。

クライアント-サーバ方式では、あまりにクライアントの要求が多くなるとサーバが情報を処理しきれなくなる(ダウンする)ことがあります。これに対し、ビットコインの維持管理ネットワークに用いられているP2P方式は全てのコンピュータ(ノード)が同じ機能を持ち、相互に通信しているため、一部のノードがダウンしても通信が続くというメリットがあります。一方でP2Pは、ネットワークへ接続しているノードが突然離脱することも考慮しなければならないため実装が困難であり、また各ノードが相互に通信を行うため、ネットワーク全体の通信量が増えるというデメリットも持っています。

プルーフ・オブ・ワーク

プルーフ・オブ・ワークは合意形成の仕組みです。直訳すると「仕事の証明」となりますが、ビットコインの仕組みを考慮して意訳すると「仕事量による証明」が妥当でしょう。プルーフ・オブ・ワークでは、ビットコインの維持管理ネットワークの参加者たちが新たなコインを得るためにコンピュータを用いて計算を費やす仕組みを利用し、最も多くの計算を行った者を信頼する、という形で合意形成を行います。

ビットコインの取引データには取引情報の他に、特殊な関数(ハッシュ関数)によって置き換えられたランダムな値が含まれています。このランダムな値を総当たり式で計算することが取引情報の検証作業であり、最初にランダムな値を特定した維持管理ネットワークの参加者はそのことを維持管理ネットワーク全体に告知します。本当に最初にランダムな値を特定されたかどうかは、別の維持管理ネットワークへの参加者たちによって検証され、承認されます。承認がその時点における維持管理ネットワークの過半数に達した場合、検証作業は完全に完了したものとみなされます。最初にランダムな値を特定した維持管理ネットワークへの参加者には報酬としてビットコインが与えられ、取引情報を記載する権利が与えられます。この取引情報の単位をブロックと呼び、ブロックが連なったものをブロックチェーンと呼びます。

ブロックチェーン

ブロックチェーンはプルーフ・オブ・ワークによって生成されたブロックを連ねたものです。各ブロックは直前のブロックにおける取引データを持っており、悪意ある攻撃者が不正なビットコイン取引をブロックチェーンに追加しようとした場合、連鎖的に後方のブロックのデータも変わってしまいます。悪意ある攻撃者はブロックチェーンに含まれる全てのブロックを改ざんしなければならないことになります。

先述のように、プルーフ・オブ・ワークは世界中に点在するビットコインの維持管理ネットワークの参加者たちによって行われています。悪意ある攻撃者が不正なビットコイン取引をブロックチェーンに追加したいのであれば、世界中の善良な維持管理ネットワークの参加者たちを上回る計算量をもって、プルーフ・オブ・ワークを実施しなければいけません。そんなことをするくらいなら、善良な維持管理ネットワークの参加者となり、新たにビットコインを採掘してブロックチェーンへ記載して報酬を受け取る方が、よほど割に合います。

一方、ブロックチェーンの改ざんは全く不可能というわけでもありません。ブロックチェーンの正当性は多数決によって判断されます。したがって、悪意ある攻撃者がプルーフ・オブ・ワークによる計算を大量に行い、維持管理ネットワークにおいて全体の51%を占めてしまえば改ざんは成功します(51%アタックといいます)。現在、プルーフ・オブ・ワークによる検証作業は寡占化が進んでいます。原因はプルーフ・オブ・ワークによって報酬を受け取るため、企業のような組織がこぞって多数の高性能なコンピュータを稼働させているためです。一個の組織が過半数を占めるまでには至っていませんが、仮にいくつかの組織が手を組んで改ざんに取り組んでしまえば維持管理ネットワークの過半数を占めることは不可能ではなくなっています。

 


今回のコラムでは、ビットコインの信頼性を支えている維持管理ネットワークについて、構成要素から順を追って解説しました。維持管理ネットワークは主にP2P、プルーフ・オブ・ワーク、ブロックチェーンといった技術によって構成されています。ビットコインの信頼性は、悪意ある攻撃者が不正を働くことができないよう、維持管理ネットワークの仕組みが巧みに作られていることに由来します。

今回は維持管理ネットワークを構成するそれぞれの技術について、知っておくべきポイントを押さえた概要を記しましたが、興味があればより詳細に調べることをお勧めします。あらゆることに言えますが、知識は力となります。ビットコイン取引において知識を得ることは、第一にリスクを軽減することに繋がります。また、ビットコインのような仮想通貨が新たに発行された際、その仮想通貨がどれほど成長するか見定めるためにも役立ちます。

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