ダオ(the DAO)とは

仮想通貨についての記事を読んでいる方の中には仮想通貨『イーサム』とセットで、『ダオ(the DAO)』という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。ダオはイーサリアムのネットワーク上で稼働する投資ファンドです。ベースとなるプログラムとして、イーサムと同様スマートコントラクトの技術が使用されています。ダオ(the DAO)は非集権的、民主的であることを追求したファンドであり、ファンドデータについても特定の場所に保有するのではなく、世界中に分散することでセキュリティや処理性能を高める分散型システムの形態を採用しています。仮想通貨を取り扱った経験のある方は、ビットコインにより分散型システムの実用性が十分に証明されていることをご存知かもしれません。

今回は特定の管理者を必要としないことを強みとした分散型投資ファンド「ダオ」について、ここでは基礎となる仕組みやDAO事件という出来事、またDAO同様の非集権型ファンドの将来性についてご紹介します。

ダオ(DAO)の仕組み

ドイツのブロックチェーンスタートアップである「Slock.it」。そのサイドプロジェクトとして開発されたのがダオ(the DAO)です。ダオはイーサリアムブロックチェーンシステム上に展開された自立分散型の投資ファンドであり、DAOトークンと呼ばれる独自コインを購入・保有することでファンド参加することが可能です。

投資したプロジェクトの成果が還元される仕組み

DAOコインの購入で支払われた金額はダオの資金プールで管理され、投資を行う対象についてはDAOトークンを保有する人々の投票によって決められます。
投票の比重は保有するDAOトークンによって決まります。投資対象が決まると、資金プールから金額を分配、実際の投資が行われます。投資を行ったプロジェクトの売上の一部は、ダオへと還元されます。これらの契約はすべてプログラムのコードとして世界各地のコンピューターに保管されます。

ダオでは、DAOトークンを保有する参加者の総意として投資を行い、収益を公平にDAOトークン保有者へと還元します。その際取引データーを保有するデーターの一部が破損する、攻撃を受けるなどのトラブルがあった場合にも世界各地に保有された別のパソコンから取引データーを復旧することが可能です。ダオで行われた取引データーはビットコインのブロックチェーン同様、世界中にコンピューターが存在する限りなくなることがない、画期的なプロジェクトとであるといわれていました。

ダオで行われる具体的なプロセス

続いて、ダオで行われていた実際の投資プロセスについてお話いたします。ダオで行われていたプロセスは「提案」「配当分配」「DAOトークンをETHへ変換」と大きく分けて3つがあります。

1.提案
DAOトークンの保有者が自身の抱くビジネスモデルと、ダオへの利益還元率や投資に必要となる資金プールの出資額をまとめ、キュレーターへと提出します。こうした提案の管理や作業はすべてキュレーターが行っており、その選任はDAOトークン保有者の投票によって行われています。キュレーターは提案内容を確認・承認した後、ダオのネットワークへと配信します。その後は、提案に対するトークン保有者達の投票が行われ、賛成多数の場合はプロジェクトへの投資が行われます。

2.配当分配
投資されたプロジェクトに成果が発生した時は、事前に決められた割合に応じた収益がダオへと渡ります。そして、その還元率とトークンの持分に基づいた配当がDAOトークン保有者へと還元されるのです。

3.DAOトークンをETHへ変換
保有しているダオの配当および権利を確定させることをスプリットと呼びます。これはトークンをETH(イーサリアム)へと変換する上で欠かすことのできないプロセスです。スプリットは保有者自ら提案・提出しなければなりません。

この一連のプロセスがDAOの基本的な仕組みとなります。

ダオをめぐる事件とは

新しい種類の投資ファンドであるダオは世界中の投資家からの注目を集め、クラウドファンディングの中でも当時最大となる資金額、日本円にすると約150億円もの資金を集めました。しかし、2016年の6月、ハッカーの手によって資金の一部が不正送金されるという事件が起こりました。

ダオの開発コードには脆弱性があり、ハッカーはそこを攻撃しました。悪意ある人間の不正な操作により、当時ダオの資金プールに存在していたお金のおよそ50%が外部に送金され、資金プールから分離されるという事件が起こりました。その額はイーサムコイン約364ETHであり、43億程度に相当する額であったといわれています。当時、イーサムの関連する大規模な不正送金事件であったため、この出来事はイーサムのハッキング事件として取り扱われることもありますが、ハッキング事件の原因はイーサムの脆弱性でなく、DAOのシステム上の脆弱性を狙って行った事件でありました。

幸いDAOを構成するスプリットの性質上、資金プールから分離させた資金は28日の間、移動させることができない仕組みになっており、ハッキングが発覚した後も対応に掛ける時間が確保できました。

事件によってダオのシステム上の脆弱性について問題となりましたが、スプリットの持つ制約については評価されることとなりました。この記述は、イーサリアムでも使用されているスマートコントラクトにて定義されたルールであったために書き換えができなかったようです。

DAO事件後の対策について

資金プールからの不正送金について、ダオやイーサリアムのコミュニティ内では積極的に議論が行われました。DAO事件の復旧を行うために下記の3つの策が提案されました。

一つ目の対策は、イーサリアム上の取引履歴データを不正送金が引き起こされる前にまで戻す方法です。これはハードフォークと形容され、現行のブロックチェーン技術にも大きな影響を与えることが懸念されました。二つ目は不正送金の送信先となるアドレスを永久に利用不能とする方法です。これはハードフォークと比べてブロックチェーンへの影響も小さいことから、ソフトフォークと形容されています。三つ目となる最後はあえて何もしないと言う考えです。

この3つの対策について議論が交わされましたが、結果的には事件から20日間程度で過半数の賛同を獲得したハードフォークが採用、実施されています。これにより、イーサリアム上の取引ではイーサムの取引履歴は事件前の状態に戻り、不正送金はもともとなかった状態になりました。一連の流れから、イーサリアムやダオではユーザーに損益も発生せず安全なサービス運用ができると周知することができたのです。

ダオの将来性

一度はハッキングによって不正送金が行われたものの、ハードフォークによる対策で事なきを得たダオ(DAO)。これをきっかけとしてイーサリアムのスマートコントラクトの安全性は、その健全さを世にアピールすることとなりました。元々ダオには分散型プログラムによって、悪意を持った第三者の介入を防ぎ、ビジネスを活性化させる新たなきっかけとなる目的があります。

ダオが秘めた将来性とは?

ダオが社会へと与える影響は大きく分けて3つ挙げられます。

一つ目は既存通貨とは異なるアプローチが可能となったことです。プロジェクトへの投資はDAOトークン保有者によって行われます。トークンは既存の通貨が持たない取引上の柔軟性を持つため、ドルや円といった通貨により形成された既存の方式から脱却、経済上の格差を解消するきっかけになるのでは、と期待が寄せられています。

二つ目は特定の第三者による干渉を受けにくいことです。イーサリアムネットワークが基盤となっているダオは分散型処理システムなため、運用にかかわるマシンは世界中に分散しています。これによって、外部からの攻撃に強く、政府や悪質なハッキング等による妨害も受けにくい構造となっています。

三つ目はシステム維持にかかるコストの削減です。さまざまな仮想通貨を始め、分散型システムを導入したサービスが増えており、多くは決められたアルゴリズムを繰り返すことで取引処理等を実現しています。そこには管理者や運営母体が存在せず、基本的にはアルゴリズムが正常に動作するよう管理・保守や改善する人だけが必要となるため、人件費といったコストの削減も可能となります。

前述の3つの利点に加え、ビットコインやイーサリアム、ダオなどの開発コードはオープンソースであるため、開発の流れも活発化しています。多くの開発者の手によって修正や改善が進められている点も、ダオが秘めた経済的な革命へとつながる将来性の一つと言えるかもしれません。

投資ファンドであるダオはプロジェクトへ投資し、その収益還元によってDAOトークン保有者へ利益を得ることができます。イーサリアムのスマートコントラクトが採用されているため、契約の確認から処理まで自動で進められる上にセキュリティ制度も高い点が特徴です。ハッキングによる事件が発生したものの、28日間は資金を移動できないと言う特性から事件後の対策が十分に可能だったなど、事件がきっかけとなってダオが健全なサービスを提供できる点が見直されたことも事実となります。非集権的ファンドについては、まだまだ課題は多いものの、今後の進化によってダオを超えるようなシステムが誕生する日もそう遠くはないのかもしれません。

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