ビットコインにおけるアービトラージとは

これからビットコイン投資に関わろうと考えて調べ物をしている方、あるいは既にビットコイン投資に携わっている方は、アービトラージという単語を目にしたことがあるかもしれません。ですがアービトラージについて詳しくは知らない、という方は多いのではないでしょうか。アービトラージとは複数の取引所においてビットコインを売買することで利益を得るという投資手法です。アービトラージという投資手法は一見すると面倒なことをやっているように見えるかもしれません。今回のコラムではビットコインにおけるアービトラージの方法、メリットについて説明します。

商売の原則は安く買い、高く売ることです。何を当たり前のことを、と思われたかもしれません。ですが、この原則に立ち戻ると、アービトラージのような一見すると複雑で不思議に見える商売も、安く買って高く売るという原則に基づいて行われていることが分かります。

アービトラージとは

アービトラージ(Arbitrage)とは、日本語に直訳すると鞘取り、あるいは裁定取引と呼ばれる取引手法のことです。具体的には、異なる複数の市場において商品を売買し、市場ごとの取引相場の差額を得ることで利益とします。

例を挙げてアービトラージをご説明します。簡単のために A と B 、二つの市場において、円建てでトウモロコシを売買することとします。手数料等は考慮しないものとします。

市場 A におけるトウモロコシ 1 トン あたりの価格は 21,500 円でした。ところが、同時期の市場 B におけるトウモロコシ 1 トンあたりの価格は 21,830 円でした。このとき市場 A にてトウモロコシを購入し、同量のトウモロコシを市場 B で販売すると、市場 A と市場 B におけるトウモロコシの価格差 330 円を利益として得ることができます。これがアービトラージという取引手法を採用したことによる利益です。

上記の例では投じた額に対して 1.5 パーセント強程度の利益しか生んでいないように見えます。また一般に、異なる市場における相場の差異というものはそれほど大きいものではありません。勘の良い方でしたら既にビットコイン市場に当てはめて考え始め、ビットコインについては割に合わない取引手法だ、と結論しているかもしれません。ビットコインは発明されてから十年も経過していない仮想通貨であり、短期的には相場の上下が激しいという性質を持っています。一方で、中長期的な観点からすると、ビットコインの相場は右肩上がりを続けています。ビットコインが現実の通貨に対して高値を付け続けている、ということです。それならばビットコインを保有して長期間持ち続けた方が得だし安全だ、という考えです。言い換えると、アービトラージは「損で危険」だという結論に至ります。

ですが、アービトラージはそもそも時間の経過という軸で投資対象の価値を評価せず、市場の相場という軸で投資対象の価値を評価し、利益を得る手法です。本当にビットコインの取引においてアービトラージを行うことが「損で危険」なのか、もう少し掘り下げてみましょう。

ビットコインにおけるアービトラージとは

ビットコインの運用を始めようとしている方は、当サイトでおすすめしている取引所が複数存在していることをご存知でしょう。何を基準に取引所を決めますか?既にビットコインの運用を行っている方は、取引所を選んだ時のことを思い出してください。何を基準に取引所を決めましたか?手数料、取り扱っている通貨、先物取引の可否等々、取引所によって様々な違いがあることは既にご存知かもしれません。

そう、実を言うとビットコインの取引額も、わずかですが取引所によって異なるのです。このことに着目し、ビットコインでもアービトラージを行うメリットが生まれてきます。

ビットコインの投資で利益を上げようと考えた場合、まず誰もが思いつくのはビットコイン取引所を利用してビットコインの相場が安い時に買い、高い時に売る、という単純ながら強力な手法でしょう。これはひとつの取引所におけるビットコインの相場に着目し、過去、現在、未来におけるビットコインと価格差を考慮して売買を決定する、という投資手法です。

上記の取引手法に対し、ビットコインにおけるアービトラージは、異なる複数の取引所における同時期の相場に着目します。すなわち、安値を付けている取引所のビットコインを購入し、高値を付けている取引所でビットコインを売却します。安く買い、高く売っているので当然ながら利益が生じます。

一回の取引における利益率はそう大きいものではありません。仮に、序盤で述べたトウモロコシの例を引き合いに、仮に取引額に対して得られた利益が 1.5 パーセント程度だとしましょう。 10,000円 を投じた場合、 150 円の利益が得られます。ここで、取引を一日に百回繰り返したらどうなるでしょう?あるいは百倍の 1,000,000 円を投じたとしたら?一日に百回取引を行った場合、仮に元手を同一額だとすれば 15,000 円の利益が生まれます。10,000円の百倍、 1,000,000 円を投じた場合、やはり百倍の 15,00 円の利益が生まれます。すなわちアービトラージは、取引の回数や原資の額に比例して利益の絶対量が大きくなるのです。

ビットコインでアービトラージを行うメリットとデメリット


まずメリットを説明します。取引所におけるビットコインの取引は一般に、売手と買手の両方が存在することで成立します。ここで重要なことは、ビットコインの取引が成立した瞬間、ビットコインの移動はほぼ瞬時に行われる、という点です。売手と買手さえ存在すれば、ビットコインの原理上は一日に百回という取引も可能になります。また、取引所における相場の違いが小さい、つまり利益率が小さい場合でも、原資が大きいほど利益の絶対量は大きくなります。状況が許す限り、手堅い利益を上げ続けることができるのです。

次にデメリットを説明します。デメリットとしては、まず複数の取引所におけるビットコイン相場を常に把握する必要があるため手続きが複雑になるということです。一つの取引所における相場だけを見て時間経過に伴う相場の推移を見れば良い場合に比べ、二つ、三つ、とチャートを比較して取引を行うのは大変な作業です。また、各ビットコイン取引所における価格差は、相場の上下が激しい時に特に大きくなると言われています。逆に言うと、相場が安定している際にはアービトラージによる利益は小さくなり、場合によっては取引手数料の方が上回ることも十分にありえます。ここで、相場が安定している、というのは値動きが激しいか否か、という意味です。仮に値上がりを続けている場合でも、値上げ幅が一定である場合は安定しているとみなします。

先述のビットコインの投資をアービトラージによって行うことが「損で危険か」という問いかけに対しては、複数のビットコイン取引所における価格差と相場の変動によって異なる、という回答になります。つまり、時間の経過とともに変動する相場を見て売買する手法と、実質的なリスクおよびリターンは変わらない、ということです。


今回のコラムではビットコインにおけるアービトラージについて説明しました。ビットコイン投資におけるアービトラージとは、短期的に見ると相場の変動が激しいというビットコインの特徴を逆手に取り、相場の変動に伴って生じる複数の取引所における相場の差を利益として得る、というものです。

ビットコイン取引所を一か所に絞り、時間に伴って変動するビットコインの価格差を利益として得るという手法は、ある意味で直感的な投資方法です。それに対し、アービトラージは複数のビットコイン取引所を利用し、それぞれの相場の差異を見て取引を行うため、一見すると複雑な取引であるかのように見えます。ですが、安く買い、高く売る、という商売の原則に立ち返ることで理解が容易になります。ビットコイン投資におけるアービトラージが投資対象の評価軸を、時間経過に基づく相場の値動きから、異なるビットコイン取引所の相場差に変えているだけであるということをご理解いただけたかと思います。

なお、今回の例として示した数値は全て、アービトラージを説明するために分かりやすく単純化した数値です。実際の取引に際しては様々な要因が働きます。あくまで概念の説明と捉えていただくことをご注意下さい。

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