香港でのビットコイン事情

香港はビットコイン取引が盛んな都市です。中国といえば金融機関によるビットコイン取引が規制された国として有名ですが、香港は例外的に外交と防衛以外の自治権を有しているため、香港には中国本国で布かれた金融機関に対する規制が及んでいません。

ビットコインに関する情報を収集している人であれば、香港とビットコイン、と聞いてまず思い浮かぶのはビットフィネックス社のハッキング事件でしょう。2016年8月、香港のビットフィネックス社が外部のハッキングにより多額のビットコインを流出させてしまいました。では、現在の香港におけるビットコイン事情はどうなっているのでしょうか。今回のコラムでは香港のビットコイン事情をレポートします。

香港について

香港は1997年にイギリスから中国へ主権が移譲された後、外交と防衛以外の行政を担う香港特別行政区政府が置かれ、一国二制度が実施されています。香港では中国本国とは異なる法制度が整備されており、中国本国におけるビットコインの規制も香港には及んでいません。香港の人口は約700万人、面積は東京23区の二倍程度です。東京23区の人口は940
万人程度ですから、東京ほどではありませんが人口密度が高い地域であると言えます。

経済の観点からすると、香港は中継貿易、加工貿易を経て、現在ではロンドン、ニューヨークに並ぶ世界有数の金融センターとなっています。特徴としては、ヘリテージ財団とウォールストリートジャーナルが作成する「経済自由度指数」において、1994年から2016年に至るまで常に一位を保持している、世界で最も自由な経済圏であることが挙げられます。規制が少なく税率も低い、自由経済が推進されています。

香港とビットコイン


冒頭で述べたように、香港とビットコインと聞いてまず思い浮かぶのは2016年8月のビットフィネックス社のハッキング事件でしょう。米ドル建てでビットコイン取引を行う取引所としては当時最大手だったビットフィネックス社がサイバー攻撃を受け、12万BTC、時価にして7200万米ドル相当ものビットコインを盗まれたという衝撃の事件です。ビットフィネックス社はこの事件を受けてセキュリティ強化を行いました。現在ではログイン時のIPアドレスが異なる場合にはロックをかけられる設定が追加されるなど、他の取引所に比べても非常に厳格なセキュリティ対策が施されています。

香港でのビットコイン事情

香港の日常生活ではビットコインはどのように普及しているか見てみましょう。 coinmap というサイトではビットコイン決済が可能な実店舗の位置情報が提供されています。2017年11月時点では29店舗でビットコイン決算が可能なようです。同時期の東京都23区では56店舗が利用可能とありますから、面積比で考えると東京よりやや多い程度であると言えるでしょう。また、ビットコインATMの場所は Coin ATM Radar というサイトで提供されています。こちらを見ると香港には10箇所のビットコインAMがありますが、東京都23区は6店舗です。面積比で考えると同じくらいと言えるでしょう。日常生活においては、東京都23区と同程度の普及率のようです。

香港の政府がビットコインや他の仮想通貨に対してどのような姿勢を取っているのでしょうか。香港は経済に関する規制や少ないことで知られていますが、ビットコインに対しても規制をかけないようです。香港金融管理局は2013年11月に、ビットコインは仮想的商品(Virtual Commodity)であると見なし、規制を行わないと発表しました。ビットコインを通貨とは見なさずモノとして見なしている点で、日本が2016年に制定し2017年4月より施行した改正資金決済法(仮想通貨法)と同様の見解を持っているようです。一方で、日本においては仮想通貨を扱うための技術的な要件を満たし財務局へ登録した業者だけが仮想通貨の取引所を開設できることに対し、香港ではビットコインに関する規制が無いため自由に取引所を開設できます。実際、中国本国でビットコインに関する規制が実施された時には、中国本国でビットコイン取引所を開設していた法人が香港に拠点を移したと言われています。一方で、2017年9月には香港の証券先物委員会が仮想通貨の ICO (= Initial Coin Offering)を証券として取り扱う可能性を示唆するなど、規制や見解についてはこれから変化する可能性がありますので、新たな情報に注意しておくべきでしょう。

香港のビットコインコミュニティ

ビットコインにはソフトウェア開発者、マイナー(採掘者)、取引所、投資家、ウォレットサービス、ユーザー等々、多数の人々が関わっています。ビットコインコミュニティとは、上述のようなビットコインに関わる全ての人々が議論を交わす場です。ビットコインに関する議論はインターネットの他、サミット形式や勉強会形式でも行われており、ビットコインのサミットや勉強会には著名なハッカーや企業の代表も参加しています。このようなビットコインコミュニティはビットコインの発展に大きく寄与してきました。2017年11月現在でもビットコインが後続の仮想通貨より有力な理由は、このビットコインコミュニティが維持されてきたためであるという意見もあります。

香港では2017年9月にビットコインのサミット「2017 Shape The Future − Blockchain Global Summit」が開催されるなど、ビットコインの技術的な議論について活況を呈しています。また、2017年10月にはSegwit2x と名付けられたビットコインからのハードフォークプロジェクトに対して香港のビットコインコミュニティが強く反対したことが大きく報じられるなど、香港のビットコインコミュニティはビットコインの動向に対して強い意見を表明できる立場にあります。

香港のビットコインコミュニティが Segwit2x に反対する理由はビットコインコミュニティ全体の合意がなされていないこと、リプレイアタックへの対処が不十分であることなどが理由のようです。香港のサミット直前に開催された韓国のビットコインサミットでも香港と同様に反対意見が多数を占めたことから、 2017年11月中旬から下旬にかけて行われる予定の Segwit2x について、少なくともビットコインコミュニティにおいては多くの合意が得られているとは言いづらい状況のようです。


今回のコラムでは香港のビットコイン事情をレポートしました。2016年にビットフィネックス社がサイバー攻撃を受けたこと以外はあまり話題にのぼらない地域ですが、香港のビットコインコミュニティは全体のビットコインコミュニティに対して強い発言力を持っています。また、規制がほとんど存在しないことから今後も盛んに仮想通貨の取引が行われると考えられます。2014年2月にビットコインの流出によって経営破たんしたマウントゴックスと異なり、香港のビットフィネックス社はセキュリティ対策を強化することで経営を立て直し、現在もなおビットコイン対米ドルでは世界トップクラスの取引量を誇っています。

ビットコインに対するハードフォークによって派生した仮想通貨ビットコインゴールドが、香港のマイニング(採掘)企業である LightningAsic によって提案され、実施されたことも見逃せないポイントです。ビットコインゴールドはビットコインの技術的な課題を解決するためのハードフォークではなく、投機的なハードフォークであると見られており、頻繁なハードフォークによって仮想通貨の価値や信頼が失われることを警戒する意見もあります。香港ではビットコインのマイニングもまた活発なのです。

香港は世界三大金融センターに数えられ、中国本国からの規制も受けないためにビットコイン取引も活発な地域です。取引所が多数存在し、ビットコインコミュニティも活気があることから、今後もビットコインの仕様や取引動向に対して強い影響力を持つと考えられます。世界のビットコインの大勢を把握するうえで、香港は押さえておくべき地域であると言えるでしょう。

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