ドイツにおけるビットコイン

ビットコインの情報を調べていると、様々なお国事情を垣間見ることができます。情勢が不安定な国ほど自国の通貨に対する信頼が低いため、ビットコインの普及が進む傾向があります。情勢が比較的安定している国ではビットコイン市場の動向を見守る動きがあるものの、規制を設けるなど、ビットコインを警戒する動きがあるのも事実です。特に、欧州連合(EU)はビットコインをはじめとした仮想通貨に対して厳しい態度を取っています。欧州連合の加盟国であるエストニアが独自の仮想通貨の発行を検討していると報じられた際、欧州中央銀行の総裁は「ユーロ圏の通貨はユーロのみであり、欧州連合の加盟国は独自通貨を発行できない」と公式に警告する声明を発表しました。

今回のコラムでは、欧州連合の中核国であるドイツでのビットコインの動向をみていきましょう。ドイツの動向は、欧州連合全体に波及する可能性が高いと考えられます。ビットコインは実生活においてどれほど普及しているのか、政府や金融機関の姿勢はどうなのか。ドイツのビットコイン事情をご紹介します。

ドイツについて

ドイツの国土面積は日本の国土面積とほぼ同じくらいです。世界の国土面積順では日本が世界62位、ドイツが世界63位となっています。人口は8100万人程度で、世界15位です。人口密度は比較的高めの水準となっています。

ドイツはヨーロッパ大陸における主要な国家として位置づけられてきました。歴史、政治、経済、化学、文化、あらゆる面において、過去から現在に至るまで大きな影響力を持っています。欧州連合の前身、欧州諸共同体においても主導的な役割を果たし、現在の欧州連合においてもフランスと共に強い発言力を持っています。

 

ドイツとビットコイン

まずドイツの日常生活にビットコインがどれほど普及しているのか見てみましょう。 coinmap というサイトでは世界中のビットコイン決済が可能な実店舗情報を集めています。ヨーロッパ大陸を見てみると、オランダ、ベルギー、ドイツをはじめとした欧州西部の東よりに集中していることが分かります。ドイツでは首都のベルリンだけで60店舗以上、ハンブルク、ハノーファー、フランクフルト等の都市部にも多くのビットコイン決済が可能な店舗が見られます。また coinmap を見る限り、他国に比べて都市部のみに集中しているわけではなく、あちこちに店舗が点在している様子がうかがえます。ハノーファー市ではエネルギー会社の enercity が2016年9月に電力、ガスなど、公共料金の支払いについてビットコイン決済を採用したと発表しました。当時、公共料金の支払いをビットコインで受け付けるのは初めてのことでした。このように、ドイツの日常生活ではビットコインがかなり普及していると見てよいでしょう。

ドイツ政府は、ビットコインの価値が上昇してきた頃からフランスと共に、ビットコインが犯罪組織によるマネーロンダリングに用いられるとして規制強化を促しています。また、2017年5月と6月に、ドイツ連邦銀行はビットコインへの投資に対してたびたび警告を発しています。一方で、ドイツ政府は2013年8月、ビットコインをはじめとする仮想通貨を外貨でも電子貨幣でもない「プライベート貨幣」と位置づけ、国内における課税と取引については合法であるとしました。警告を発しつつも仮想通貨の取引を合法としたのは税制上の取扱いを明確にすることで税収増を図っているものと考えられます。ビットコインを「法律的な貨幣」と見なす向きは世界的にも多くないため、この点は特筆に値すると言えるでしょう。

ドイツの金融機関がビットコインをどのように捉えているのか見てみましょう。ドイツ銀行(公的機関のドイツ連邦銀行ではありません)はブロックチェーン技術に強い関心を寄せており、研究を行っています。ブロックチェーン技術を仮想通貨に応用するのではなく、既存の金融インフラを経由する形で実現したいようです。一方、ドイツで発足したオンライン銀行 Fidor Bank (フィードル・バンク) は2015年からドイツ最大のビットコイン取引所 Bitcoin.de と提携してビットコインの取引に乗り出しました。ドイツにおいては、規模の大きな銀行はビットコインに対して慎重であり、規模が小さな銀行はビットコインに対して意欲的な傾向があるようです。しかし、ドイツ最大のビットコイン取引所である Bitcoin.de がビットコインの仕様を拡張したアルトコイン(ビットコイン2.0)としてイーサリアムの取扱いを始めたのは2017年9月のことです。イーサリアムのリリースは2015年7月であり、世界中の取引所がこぞって取扱いを始めたことを考慮すると、やや出足が遅いという印象を受けます。

以上のように、ドイツにおけるビットコイン事情としては、日常生活には根付きつつあるものの、政府は仮想通貨に対して厳しい態度を取っており、大きな金融機関は慎重ながら利活用に向けて動いている、と人や組織によってバラバラな動きを見せている、ドイツのビットコイン事情がわかると思います。

ドイツのビットコインに対する足並みが揃わない理由

なぜドイツの日常生活にはビットコイン決済が普及しているにもかかわらず、政府や金融機関は足並みが鈍いのか、という疑問が生まれるかと思います。ビットコインが日常生活に普及している国は一般に、情勢が不安定で自国の通貨に対する信頼が低い国です。ドイツは欧州連合で最も経済成長を遂げている国であり、ユーロ危機は安定しています。また欧州連合の金融・経済政策はドイツを基準にしているとされ、しばしば批判の的にもされます。

ここでヒントになるのがアメリカです。アメリカにおいても日常生活にビットコイン決済が普及しています。アメリカとドイツの共通点は、移民や出稼ぎ労働者の多さです。アメリカは移民を世界で一番多く受け入れている国として有名ですが、世界で二番目に移民を多く受け入れているのはドイツです。ドイツは第二次世界大戦後国家間の取り決めを行い、ガストアルバイターと呼ばれる適切な保護を受けることが定められた外国人労働者を受け入れました。ガストアルバイターは賃金同一の原則が適用され、住居や社会保障が約束されています。一方、その恩恵にあずかろうと不法入国する外国人も増えました。不法入国した労働者は保護を受けられないため、安い賃金で不法に扱われることもあります。現在、ドイツにおいては人口の四分の一が移民に由来する出自を持っているとも言われています。

移民や出稼ぎ労働者は母国の家族への送金を行います。国外への送金国外へ送金する際、銀行を経由すると高額な手数料がかかり、また送金が完了するまで時間がかかります。その点、ビットコインの送金手数料は非常に安く済み、また送金はただちになされます。このような事情からドイツではビットコインの利用者が拡大しているのではないかと考えられます。ビットコイン保有者がいるためにドイツでは、店舗での支払い等にもビットコインの受け入れが進んでいるのです。

今回のコラムではドイツのビットコイン事情について、日常生活、政府の動向、金融機関の動向の三つに分けてご紹介しました。日常生活においてはビットコインの利活用が進んでいるようですが、政府や金融機関の足並みは揃わず、慎重な姿勢が垣間見えます。

上述のように一般人、政府、金融機関で三者三様の姿勢を見せているのは、移民や出稼ぎ労働者の多さに由来していると考えられます。現在のドイツによく似た例としてアメリカが挙げました。どちらもビットコイン決済が日常生活に普及しており、また移民や出稼ぎ労働者が多いという共通点があります。

ドイツにおいてビットコインの法整備や金融機関による利活用が進むのはこれからであると考えられます。ドイツが欧州連合において今後も強い影響力を及ぼすのは間違いないと考えられることから、ドイツの動向次第で欧州連合全体におけるビットコイン扱いの方向性が見えてくると思われます。ビットコインの情報収集を始めると、その膨大な量に戸惑いを覚えるでしょうが、まずは大国の動向からチェックしてみてはいかがでしょうか。

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